3.1 コンピュータの基礎
3.1.1 情報の表現
私達が日常用いる数は10進数であり,0から9の10種類の数字を用いる.これに対して,コンピュータは,「ある」か「ない」かのデジタル信号で動作しているので,0と1からなる2進数を用いる.この2つの状態を取り扱うときの単位としてビット(bit)を用いる.1ビットの場合は21=2種類の状態を,4ビットの場合は24=16種類の状態を表す.
2進数はコンピュータ向きであるが人間にとっては扱いづらいので,4ビットを16進数として用いることが多い.16進数は0から9の数字とAからFの英字を用いる.10進数,2進数,16進数の関係を表3.1に示す.
16種類の状態を表すことができる4ビットでは日常取り扱う文字を表現することができない.そこで28=256種類の状態を表す8ビットを用いることにより,英数字や記号を表現する.この8ビットを1バイト(byte)と呼び,16進数2桁で表す.また,漢字を表現するのには2バイトを要する.表3.2に文字コード表(アスキーコード)を示す.例えば,数字の0は16進数で30,大文字のAは,16進数で41である.
なお,1K(キロ)バイトという表現は1024バイトを示し,1M(メガ)バイトは1024Kバイトを,1G(ギガ)バイトは1024Mバイトを示す.ただし,ハードディスクなどの容量で,1Gバイトを1000Mバイトで表現することがあるので注意が必要である.
表3.1 2進,10進,16進数 表3.2 文字コード表
一般にx(amam-1...a1a0)をN進数で表記すると以下の関係が成立する.
x = am×Nm + am-1×Nm-1 + ... + a1×N1 + a0×N0
(0 <= am, am-1, ... ,a1, a0 < N)
16進数から10進数への変換は,16進数の各桁に重みの係数をかけて展開する.また,10進数から16進数への変換は,10進数を16で割り,以後商が0になるまで割っていき,その過程で得た余りにより16進数を得る.以下に16進数E09と10進数3593の変換例を示す.
2進数から16進数への変換は,表3.1を用いて,2進数の最下位の桁から4ビットずつ16進数1桁に置換する.また,16進数から2進数への変換は,表3.1を用いて,16進数の各桁を2進数4桁に置換する.以下に2進数100101111100と16進数97Cの変換例を示す.
0111 ⇔ 7 1100 ⇔ C |
3.1.2 パソコンの内部構成
コンピュータの動作原理は,人間の中枢機能の仕組みをモデルにしているといえる.人間が目などにより外界の情報を得る感覚機能は,コンピュータが外部からの入力を得る入力機能に相当する.また,人間が口や手などにより外界に示す機能は,コンピュータの出力機能に相当する.これら入力機能・出力機能のハードウェアはキーボードやディスプレイといった入出力装置として構成される.人間の脳が神経に指令を出す機能や,その指令をもとに入力された情報を判断する脳の機能は,それぞれコンピュータの制御機能と演算機能に相当し,中央処理装置(CPU,Central Processing Unit)として構成される.人間が情報を記憶する機能は記憶機能に相当し,記憶装置として構成される.
次に,CPUおよび記憶装置としてメモリを紹介する.
(1) CPU
CPUは,プログラムの命令解読や入出力データの制御とデータの演算処理を行う部分である.現在は,CPUの機能を1個もしくは数個のLSI(Large Scale Integration,大規模集積回路)に集約したMPU(Micro Processor Unit,マイクロプロセッサ)が主流である.現在のパソコンで用いられているCPUの代表例を図3.1に示す.
図3.1 CPUの例
(2) メモリ
メモリは,プログラムやデータを記憶する装置であり,CPUの近くにある内部メモリとコンピュータ本体の外にある外部メモリがある.
内部メモリはIC(Integrated Circuit)メモリを用いて高速なアクセスが可能なRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)から構成されている.現在のパソコンで用いられている内部メモリの代表例を図3.2に示す.
(b) 168ピンDIMM
図3.3 内蔵用ハードディスクの内部
外部メモリはフロッピーディスクやハードディスクで構成されている.内部メモリに比べて容量は大きいがアクセスは遅い.また,電源を切った後も記憶された内容は保持される.図3.3に内蔵ハードディスクの内部の例を示す.パソコン動作中(ハードディスクのLEDが点灯中)は,鏡面のような円盤(ディスク)が高速で回転している.
内部メモリから命令やデータを取り出したり,処理結果を内部メモリに戻したりするときの動作時間は,CPUが命令を解読したり演算処理を行う時間に比べて非常に遅い.そこで,CPUの高速なアクセスに対応するために,より速い読み書きが可能で,一度利用されたデータを記憶するメモリとして,CPU内部や近傍につけられるキャッシュメモリがある.すなわち,コンピュータの実際の速度は,CPUのクロック数などの基本性能だけで決まるのではなく,キャッシュメモリの存在や,それにアクセスするスピードも関係している.
表3.3に,代表的なCPUの比較を示す.図3.4に,Pentium IIIのメモリの構成図を示す.CPUの動作クロックが400MHzに対し,2次キャッシュは動作クロックの半分である200MHzでアクセスしている.
Pentium III |
AMD-K6-3 |
|
1次キャッシュ(L1) |
32Kバイト |
64Kバイト |
2次キャッシュ(L2) |
512Kバイト |
256Kバイト |
動作クロック |
450MHz,500MHz |
400MHz,450MHz |
バスクロック |
100MHz |
100MHz |
図3.4 メモリの構成図(Pentium III 400MHzの場合)
3.1.3 周辺装置とのインターフェース
コンピュータ本体と周辺装置は,入出力インターフェースを通してケーブルで接続し,データをやり取りする.図3.5は,コンピュータ本体にあるインターフェースの例で,マウス,キーボードやプリンターをつなぐポートとRS-232Cなどのインターフェースを示している.
図3.5 インターフェースの種類とコネクタ形状の例
大抵のコンピュータは,データの通信用として,1ビットずつ情報を転送するシリアル転送のためのシリアルインターフェースと,8ビットの情報を並列に転送するパラレル転送のためのパラレルインターフェースを備えている.
シリアルインターフェースの代表例としてはRS-232Cインターフェースが挙げられる.現在,D-Sub9ピンのコネクタを用いて接続されることが多い.ただし,接続に用いる際のケーブルに関して注意を要する.ケーブルにはストレートケーブルとクロスケーブルがあり,モデムの接続にはストレートケーブルを,それ以外の周辺装置(デジタルカメラ,プリンタなど)にはクロスケーブルを用いる.
パラレルインターフェースの代表例としてはセントロニクス・インターフェースが挙げられる.これはプリンタの標準インターフェースとして用いられていた.
パラレル転送は,高速にすると8ビットの情報を並列に転送するために用いる8本の配線間において信号が乱れる問題などがあり,高速化には向いていない.逆に,1本の配線により1ビットずつ転送するシリアル転送の方が高速化に向いている.現在,新しいシリアル転送の規格として,USB,IEEE1394の他に,赤外線を用いたIrDAがある.
USB(Universal Serial Bus,汎用シリアルバス)は,キーボード,マウス,プリンタなどの周辺機器を1種類のインターフェースにまとめて接続することが可能で,取り扱いが容易である.すなわち,それぞれの周辺機器に応じてインターフェースコネクタに接続することが不要となる.転送速度は,1.5Mbps(bps:bit per second,ビット/秒)のロースピードと12Mbpsのハイスピードがあり,RS-232Cの115.2bpsより高速である.また,コネクタにHUB(ハブ)を接続すれば,複数の周辺機器を枝分かれ状に接続することが可能で,最大127個の周辺機器が接続可能である.また,接続はコンピュータの電源投入後でも可能で,プラグ&プレイ機能によってそのまま使用できる.
IEEE1394は,パソコン用周辺機器だけでなく,家電製品などの接続も可能である.転送速度は,100Mbps,200Mbps,400Mbpsの3種類があり,USBより高速である.しかし,USBのようにHUBを用いて複数の周辺機器を枝分かれ上に接続せず,周辺機器間をデイジーチェイン(直列)で接続する.ただし,周辺機器より接続を分岐することは可能である.
3.1.4 インターネットに必要な周辺機器
コンピュータをインターネットに接続する際に必要な周辺機器として,モデムとTAを紹介する.
(1)モデム
モデムは,電話回線を通してインターネットへのダイアルアップ接続に用いられる周辺機器であり,電話回線で扱うアナログ信号とコンピュータで扱うデジタル信号の変換を行う.つまり,デジタル信号を音声信号に変調器として送信し,受信した音声信号をデジタル信号に復調器として変換する.コンピュータとの接続はシリアルインターフェースで,通信速度は33.6kbpsが標準である.加えて,現在の電話回線にデジタル化が導入されたことより,56Kbpsの通信速度をもつモデムが実用化されている.
(2)TAとDSU
インターネットを利用する際にモデムを用いた場合,電話回線にアナログ信号が含まれていることからノイズの影響を生じ,高速な通信速度を実現することが難しい.そこでISDNによるデータ通信が利用されている.ISDNはデジタル信号だけで通信を行うので,高速な通信速度を実現することができる.ISDNを用いるのに必要な周辺機器としてTA(Terminal Adapter)とDSU(Digital Signal Unit)がある.TAはパソコンや電話器を接続するためのインターフェースでDSUに接続し,DSUは回線に接続する.